江戸時代初期から栽培されている品種で、当時の記録には「枝垂れ桜」の別名「糸桜」、その八重咲きの「糸桜八重」と残されています。八王子の森工場の正面に植樹されたシンボルツリーの「八重紅枝垂れ桜」は、平安京遷都1000年記念に建立された平安神宮の神苑の種子を、昭和18年に採種、同年12月に播種、翌19年5月末に発芽した樹齢65年の桜です。(平成21年現在)
当社のロゴマークの色にも似た淡紅色の可憐な花は、八重咲きで、花径は18~26センチ、樹高は12mに及び、満開時には、紅色の八重咲きの枝垂れ桜に目を奪われます。同種系では、福島県三春の滝桜や京都円山公園の枝垂れ桜が有名です。
1990年に英国Q博物館開館500年を記念して新種の桜を作るプロジェクトが、イギリスで発足。一葉・御所桜・山桜を交配した八重桜は、1999年に開花に成功し「アーコレード」と命名されました。更に、このアーコレードに不断桜を交配させ2005年に八重桜として初めての二季咲(11月と4月)に成功し、この桜を英国王室は「アーコレードⅡ」と命名。しかし、イギリスでは二度咲きが固定せず、Q博物館プロジェクトの要請を受け、日本においてその固定化に成功し、苗木を再びQ博物館に戻しました。
ウィリアム王子のご成婚(ロイヤルウェディング・2011年4月29日)を記念して、英国王室から日本の皇室(宮内庁)に、その桜の成木数十本が答礼として贈呈され、その内の2本が特別に宮内庁から下賜されました。この貴重な桜には、和名名称の登録が許可されていますので『山櫻ロイヤル80(八重)』と命名し、末永く80周年記念樹としました。花は大輪で、半八重咲きの淡紅色。十月桜より大輪の濃い色をしています。
この「山櫻ロイヤル80」は、2012年度品種登録種苗法の要件を満たし、日本及び欧米での品種登録が完了しました。
2013年度版の品種登録年報(Flora of Japan)と欧米品種登録誌(List of new names)にそれぞれ「山櫻ロイヤル80」、「YAMAZAKURA ROYAL 80 : P Ichise」が、上記公式学術誌に掲載されます。
「雨情しだれ」は、「七つの子」「赤い靴」などで知られる詩人 野口雨情(1882年~1945年)が住んでいた邸内に植えられていたしだれ桜で、野口雨情を顕彰して名付けられました。花は、小輪から中輪、八重咲きで淡紅色。八重紅枝垂より大きな花を咲かせ、大木にはならないが華やかさがあります。
現在、栃木県と茨城県の天然記念物に指定されており、今後国指定の特別天然記念物にもなり得る優れた品種のしだれ桜です。
京都府の京都嵯峨中院に自生していたものを、京都祇王寺に植えた桜です。平家物語に登場する美女の祇王の妹 祇女にちなみ名付けられた優雅な桜です。
花は淡紅色で少し芳香があり、花弁は15枚程で、京都府の庭師佐野藤右衛門氏が発見されました。この祇王寺祇女桜は、ヤマサクラの影響がよくあらわれている桜です。
公益財団法人日本花の会創立50周年(1962年創立)を記念して新種の桜として作出されたもので、エドヒガン系で花弁は、長楕円形で15枚程の桜です。
八重咲きで花の直径は約3.7cmの中輪、葉が出る前に開花するのが特徴。
「舞姫」は公募により名付けられました。
1912年にアメリカ合衆国ワシントンのポトマック河畔に日米親善の象徴として植樹した桜の品種がその基となっており、現在も河畔は桜の名所となっています。1982年にアメリカで寒緋桜と交配して新品種「プリンセス」を開発。約20年の歳月をかけて品種が改良され、2003年より日本にも送られ普及しました。
ポトマックの桜並木の実現までの経緯には、日本さくらの会が審査する歴代の「さくらプリンセス」の功績が大きく、これをたたえ「ファーストレディー・プリンセス」と命名されました。「プリンセス」は、アメリカ人の趣味に合うあでやかな紅色の花弁が特徴です。
和名は雅(みやび)と呼ばれています。
ツクシヤマサクラの地域変種で、ヤマサクラに比べて多花性で、花・ガク・若葉の色が多様で、耐潮があることから海岸でも生育します。成長も早く、寿命は150年から200年。
①白翁 / ハクオウ
花弁は純白でガクは緑色・花弁は多く4月下旬に開花します。
樹形は傘状で、若葉は緑色をしています。
②湯の香 / ユノカ
花弁は純白でガクは薄桃色・花弁は多く4月上旬に開花します。
樹形は、盃状から傘状で、若葉は緑色をしています。
③大谷 / オオタニ
花弁は純白でガクは赤色・花弁は多く4月中旬に開花します。
樹形は、盃状から傘状で、若葉は赤色をしています。
ヤマザクラは、葉が開くのとほぼ同時に花を咲かせます。本州南半分の山地や平地に広く分布し、エドヒガンザクラについで寿命が長い桜です。奈良の吉野山のヤマザクラは、古くから桜の名所として有名です。
岩手県盛岡市下米内で栽培されている桜。1920年に「スイショウ(水晶)」と名付けられました。白の重弁が美しい桜です。
花は二段咲き。開花が進むにつれ花の色は薄くなるため、初めに咲いた花が白くなり、二段目の濃い色の花が現れるのがわかります。
京都市左京区の市原(イチハラ)にあった桜。長く伸びた主枝のまわりに短い枝が多数つき、開花すると虎の尾の様に見えることから「イチハラトラノオ(市原虎の尾)」と名付けられました。
ほとんどが白く、先端部分の色が淡紅紫色の花弁をつけるコケシミズ。「苔清水」と言う趣のある名前の由来は、残念ながらはっきりしていないようです。
花の色が、ウコンの根茎を使って染める色に似ていることから「鬱金(ウコン)」の名前が付きました。もとは東京の荒川堤で栽培されていましたが、現在では広く普及し欧米でも好まれている品種です。
もとは東京の荒川堤で栽培されていた品種。花が下に垂れて咲くところに特徴があり、名の由来は様々あるようですが、その特徴からつけられたと考えられています。
京都嵯峨の大覚寺の東側にある大沢池のほとりにあった桜だそうです。花弁には、先端近くのふちに細かいギザギザがあるのが特徴です。
ショウゲツの栽培品種名は「Superba=優美な」という意味。花は咲き始めの淡紅紫から満開時には白へと変化し、その名の通り優美な花を咲かせます。
アズマニシキは、山桜の丘にも植樹されているヤエベニトラノオとよく似ていて区別がしにくい品種です。花は約5センチ、八重の大輪を咲かせます。
原木は京都の平野神社境内にあります。ひとつの花に雄しべが2つあり、果実も2つずつつきます。そのことから「妹背」と名前が付いたそうです。
室町時代からあった桜だと言われています。「普賢象」は普賢菩薩の乗っている象のことで、葉化した雄しべがこの象の鼻や牙に似ていることから、この名前が付いたと言われています。
もとは東京の荒川堤で栽培されていた品種。栽培品種名は「Contorta」と言い、「ねじれた」と言う意味です。花弁が不規則にねじ曲がるように咲くことから付けられた名前だそうです。
北海道松前町(渡島半島の先端、日本海側の松前半島)でマツマエハヤザキ×リュウウンインベニヤエが交配され、1961年に作られた品種です。
京都府立植物園や多摩森林科学園で栽培されている品種で、手毬状に花をさかせることから、この名前が付けられています。
花弁の外側が濃いピンク色なのが特徴で、花に強い芳香があります。
長野県の高遠城址公園の「高遠の小彼岸桜」とも呼ばれ、大変有名な桜です。長野県の天然記念物にも指定されており、高遠城址公園では、樹齢100年を越す老木を含め約1500本もの桜が植えられています。
東京の荒川堤で栽培されていたものが全国に広まった桜。古くは奈良で名木と言われていたそうで、興福寺の僧侶がその桜を「楊貴妃」と呼び、こよなく愛したと伝えられています。
天皇陛下の即位式に使われる最高位の御衣と同様の色の花を咲かせます。花色は全体に淡い緑色で、部分的に濃い緑色のすじがはいり、大変珍しいことから広く栽培されている桜でもあります。
枝が真っ直ぐ上を向いて伸び、花も上向きに咲く珍しい品種。樹形は細いほうき状になっており、その形により海外でもよく知られています。花が白いものは「七夕(タナバタ)」と言いますが、残念ながら現存しないそうです。
オオヤマザクラの別名でベニヤマザクラ。ヤマザクラに似ていて、花色が濃い紅色のためベニヤマザクラと別名がつきました。北日本では、広く観賞用として栽培されています。材は、建築、家具、楽器などにも利用されます。
春のお彼岸の頃咲く桜です。もともとは東京(江戸)には自生していなかったと思われるこの桜は、江戸で多く栽培されていたことから「エドヒガン(江戸彼岸)」と言う名前が付けられました。
東京の荒川堤で栽培されていたものが、全国に広まった栽培品種の桜です。サトザクラの代表的な品種で、害虫や都市環境に強いため、ソメイヨシノについでよく植えられている桜です。
原木は金沢の兼六園にあり、国の天然記念物でした。1970年に枯死したため、現在は接ぎ木によって増やされたものが園内に植えられています。慶応年間(1865~1868)に孝明天皇より前田家に下賜された桜と言われ、御所桜の名でも知られています。
愛媛県松山市指定の天然記念物。天武天皇の皇后が、道後温泉に湯治に訪れ、西法寺の薬師如来に病気平癒の祈願をしたところ全快し、天皇より賜った薄墨の御綸旨の色にちなんで「薄墨桜」と名付けられました。
フジザクラ(富士桜)はマメザクラ(豆桜)の別名。本州の関東・中部地方に分布し、丘陵地から低山に生えています。箱根や富士山周辺には特に多い小形の桜です。
参考資料
山と渓谷社「新 日本の桜」
日本さくらの会Webサイト